近年、医療はテクノロジーの進化とともに高度先端化し、悪性腫瘍をはじめ様々な難治性疾患の治療成績が飛躍的に向上しています。一方で、医師にはその技術や知識の習得と更新にこれまで以上の修練が求められ、難易度の高い最先端の治療を安全に提供できる習熟した治療の担い手が慢性的に不足する事態に直面しています。また、治療の受け手である患者さんも、これまで以上に自らの病状や治療方法に関するより高度で正確な知識と理解が求められています。
私たちは、1990年代後半より、大きな手術を小さな傷から行うこと(いわゆる低侵襲手術)を実現すべく、当時最先端の腹腔鏡や自動縫合器を消化器外科領域の外科手術に取り入れ、腹腔鏡下手術の特長(拡大視・水平視)を活かし、その動作制限を克服するための独自の手技を確立し、その原理原則を医局員や他施設の外科医に伝承・発展すべく鋭意努力して参りました。1999年に世界で初めて進行胃癌に対する完全腹腔鏡下胃全摘術の手技を確立し、2006年には本邦で初めて食道癌に対する気胸併用腹臥位胸腔鏡下食道亜全摘の手技を確立しました。これらの技術により、従来の開腹・開胸手術と比べて創縮小、術後疼痛軽減、早期回復、早期社会復帰などの術後短期成績改善効果が得られることが明らかとなりました。ところが,手術に伴う合併症の発生頻度は開腹手術といわゆる低侵襲手術とで差がなく、患者さんにとって本当に負担が少ない”真の低侵襲手術”とは何か、とても考えさせられました。結果、同じ手術の規模でありながらも(根治性を落とさずに)合併症が少なく機能温存性に優れた手術を実現すべきという発想に至り、2009年に日本で初めてda Vinci S Surgical System (Intuitive Surgical, Inc.)を導入しました。胃癌、食道癌、直腸癌、肝胆膵悪性疾患に対するロボット支援下内視鏡手術を自費診療として順次開始し、患者さんに病気の診断や標準的な治療法は元より、ロボット支援下内視鏡手術、従来型低侵襲手術、開腹・開胸手術それぞれの利点・欠点についても丹念に説明しながら症例を重ね、内視鏡下手術用ロボットの性能を領域横断的に最大限に引き出すための独自の方法論を編み出し、胃癌・食道癌の領域で合併症を軽減できる可能性を世界に先駆けて報告しました。その技術を国内外に広める活動を行いながら、2014年より先進医療B「内視鏡下手術用ロボットを用いた腹腔鏡下胃切除術」を主催し、腹腔鏡下胃切除術に内視鏡手術用ロボットを使用することで合併症発生率を半分以下に軽減できることを多施設共同研究として証明し、2018年に胃切除、食道切除、直腸切除を含む12のロボット支援下術式が新たに保険収載されるに至った次第です。
20年余りにおよぶ一連の活動の中で、最新のテクノロジーを開発する企業や研究者、それを診療に活用する医師やコメディカルスタッフ、最新の治療を受ける患者さん、将来患者や医師になる可能性がある一般市民の皆様、医療の安全性を担保する行政や学会等の諸団体の交流を支援し活発化する潤滑油的な組織を設置することで、先に述べた先端外科治療を巡る諸問題を軽減できると確信しています。以上のような認識に基づき、本法人では、患者さん本意の先端外科治療の開発と普及促進に必要な人材育成とシステム構築を目的とし、中立的立場で、高度医療の専門家とそれを有機的に統合させる領域横断的コーディネーターの育成および生涯教育、患者さんや一般市民の皆様への最先端の医療技術に関する情報提供、新たな治療法の開発支援、研究者主導臨床研究および集学的医療研究を行う研究機関や研究者に対する支援、国内外の医療従事者教育を含めた様々な領域横断的な事業を行います。これらの事業を通じて、医療の地域格差の軽減、医療資源の適切な配置による均てん化と医療レベルのさらなる向上、あらゆる疾患の治療成績の向上と、広く一般市民の健康と福祉の増進に寄与することが本法人設置の究極的な目的です。一方で、このような活動を任意団体として公的資金や企業からの奨学寄付金等で継続的に行うことは非常に困難で、私たちが掲げる活動の趣旨に賛同いただける個人・法人からの寄付金・会費の受け皿として法人を設立し、安定した実務基盤を構築することが必須であり、特定非営利活動法人の設立に至りました。皆様のご理解と幅広いご支援をお願い致します。
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先端外科治療推進協会
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